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息なのか腕なのか [奏法について]

先日、トロンボーンを吹いているある方とのレッスンであったこと。アレクサンダー・テクニークのレッスンは2度目だった彼女は「もっと息がスムーズに流れてもいい気がする」ということでレッスンに来られました。

とりあえず演奏をしてもらって、様子を見ていたところ、あることが見えてきました。

それは

「息を止めるかわりにスライドを止めている」

ということでした。

音階やアルペジオを吹いてもらうと、スライドを動かすときに、音の移行の滑らかさが少し損なわれていたのです。

その原因は

「舌の仕事と腕の仕事を混同していた」

ことにありました。

スライドを動かして異なるポジションで次の音を鳴らす場合、スライドを動かしている間はも息を流し続けて音が鳴り続けていると、グリッサンド状になるのはトロンボーン特有の性質です。そのため、スライドを動かす間は「音を止める」ことが必要になります。

その「音が鳴らないようにする」仕事を、彼女は無意識的に腕でやろうとしていました。「音を止めよう」とする意図が、腕に向かうと、腕はスライドをギアチェンジするようにガクガクと動かします。かなりの腕力を使ってビタッとポジションに「ジャンプ」しようと色々力み始めるのです。

ですがスライドはあくまで「スライド」します。スライドの動きは必ず「スライド的」であり「段階的」ではないのです。スライドはできてもジャンプはできません。構造的にどうしても。

しかし、音の移行をグリッサンド状にせずに明確に切り替えようと意図していたとき、彼女は無意識にスライドの動きを「ジャンプ」させようとするかのように、腕をガチッガチッと音の切り替わりの度に固めていたのです。

レッスンの中で必要だったのは、

彼女の望む通りに、音を明確に切り替えてくれることを実際に果たす方法

です。

さあでは、トロンボーンがスライドする楽器である一方で音はグリッサンド状にせず明確に切り替える方法と何でしょうか?

彼女は「腕を止める」ということはやっていました。この「止める」部分は正解です。しかし、何を止めるかが間違っていて、結果的に効果はなく身体的緊張につながっています。

では何を止めるか?

正解は

「舌で息が唇の間を流れるのを止める」

です。

1:あるポジションで音が鳴っています。その間、唇の間を息が流れています。
2:次のポジションにスライドを移動させます。その間、舌で唇に息が流れないようにしておきます。
3:スライドを移動させきったら、舌を離し息が流れるようにしてあげます。すると次の音が鳴ります。

こうすると、音は明確に切り替わります。

もっと簡単に言ってしまうと、「スライド移動のタイミング」と「タンギングのタイミング」をうまく連動させればよいのです。

そこで彼女には

「腕は止めずに楽に動けるようにしてあげて、音を切り替えるのは舌とアンブシュアのほんのちょっとした作業で済む」と考えながら吹こう

と提案しました

音は唇と舌。
スライドは動いている腕。

といういうふうに繰り返し考えながら吹いてみてもらうと....

あっと言う間にスムーズに労力無くクリアに音が切り替わるようになりました。腕の無駄ながんばりも減ったので、本人は「吹くこと自体がラクになった」、と言っていました。

このように、どこで何の仕事を担うのかが、実際にマッチして明確になると、ずいぶん吹きやすくなります。

ぜひお試し有れ!


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アンブシュア「を」ではなくアンブシュア「が」 [アレクサンダー・テクニークについて]

先日、管楽器奏者の顎や首を引く癖について、実際にあったトロンボーン奏者とのレッスンから分かったことを書きました(内容はこちら)。きょうはその続編です。

この顎や首を引く癖がポイントとなったレッスンではもうひとつとても興味深い事柄が浮上しました。このレッスンをやっていたときはグループレッスンで、ホルンやフルートなど他の管楽器奏者も参加していたのですが、彼らの興味を惹き付けたのは実はむしろこちらでした。

それは、よく言われている「アンブシュアを引かないように」という考え方。

まずこれの考え方の私なりの解説をしますと、次のようになります。

なぜ「アンブシュアを引いてしまわないように気をつけよう」ということを多くの奏者が考えるかと言うと、それは経験的にアンブシュアを引くとなんだか吹きづらいのを知っているからです。つまりこれは経験的には事実と言えます。

しかし私はちょっと異なる角度からちょっと異なる言葉で考えています。それは、この話のポイントは本当は「望ましく吹きやすいアンブシュアの使い方は何か」にあるということです。それを考えるには、管楽器を吹くとき基本となるのは「唇を閉じるということが音を鳴らすのに必要」ということです。

金管楽器の場合
閉じた唇を息が押開ける→唇はまた閉じるということの繰り返しで振動が生まれます。実質的には「唇を閉じる」という動きをし続けているのです。アパチュアの開き具合は、息の強さと唇の閉じる力の強さのバランスで決まりますから、作業としては単純に「閉じるということをやり続けている」なのです。

リード楽器の場合
リードとリードまたはリードとマウスピースの間の開き具合を調節するのに、唇と顎の「閉じる力」を調節しています。金管楽器より顎の力の関与が大きいですが、「閉じるということをやり続けている」という点では同じです。

フルートの場合
フルートは金管と異なって両唇は開いたままです。能動的にアパシュアを作ります。しかしそのアパチュアの大きさや形を作るうえで「唇を閉じる」という動きは大事な一部です。閉じ切らないだけで、「閉じる動き=上下の唇を近づけたり、アパチュアの形や大きさを絞る唇の動き」はやっています。


というわけで、程度の差はあれど「唇を閉じる」動きは管楽器に共通します。その閉じ方に大まかにいうと二つの方法があります。

1:唇をほお骨や顎の方に貼付けるようにして、後ろや横に引っ張ると、上下の唇は近づきます。
2:唇を上下の歯から離れるような動き(すぼめるような動き)をすると、つまり前に動かすと上下の唇は重なります。

どちらも、「閉じる」という点においては等しく有効です。しかし、管楽器で音を鳴らすということになると、1と2で吹きやすさや音が変わってきます。結論から言うと、2の方が効果的なのです。

それは

A:共鳴
・唇を骨や歯に貼付けると(後方向)、骨の振動を止める
・それに対して唇を前方向に使う骨に対する圧力が相対的に少なく骨が振動しやすい。共鳴が得られる。

B:唇とマウスピースの圧力
・唇を後ろ方向に引くと、唇とマウスピースの圧力が減る
 →それを補うためマウスピースを唇にプレスすることになるので、消耗する
・唇を前方向に使うと、唇とマウスピースの圧力が増える
 →プレスしなくてすむので、消耗せずまた接着も安定するのでアンブシュアの支えを浪費しない

というふたつの側面があるためです。

従って「アンブシュアは前方向に使いたい」なのです。前方向に使いたいのであって、「引きたくない」あるいは「引かないように気をつけたい」と考えるより実行しやすいかと思います。

さて、長くなりましたがここまでは前置き。

件のレッスンでは、このトロンボーン奏者は「アンブシュアをどうしても引いてしまう」という悩みがあったのです。引かないようにしようといくらしても、高音に映るとどうしてもピッと引いてしまう。

そう、ここに先日書いた「首を引く癖」が深く関係していたのです(内容はこちら)。

実は、

彼は「アンブシュア引いていた」わけではなかった

のです。実態は、

首によってアンブシュア引っ張られていた」

のです。

そのため、先日書いたように、頭を傾け手首で楽器の角度を自由に調節する方法が代わりに見つかったことで首を引く癖がなくなると、アンブシュアも引っ張られなくなって、ちゃんと思い通りに前方向に使えるようになったのです。

そう、「が」と考えるのか「を」と考えるのかで、全く展開がちがってしまうのです。

こういう「が or を」問題は、アンブシュアにもタンギングにも呼吸に関してもよくあります。そこが入れ替わっているせいでなかなか意図している通りに直らないことがあるのですね。

そういうときに、頭の動きと身体全体の動きの関係を視野に入れて分析するアレクサンダー・テクニークは非常に効果的になります。可能ならば実際にレッスンを受けてみるのをおすすめしますが、困ったときは困っている「場所」の外側に目を向けてみる、という発想を使ってみるとよいでしょう。

ぜひ、試してみてください。


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あがってしまいそうな時に自分がどうすれば良いかが分かった [生徒さんの声]

過4月21日、「あがりは味方。本番で自分のすべてを出す方法」と題したセミナーBODY CHANCE 目黒スタジオにて行いました(内容はこちら)。参加者は実に50名近くを数えました。参加者の声をご紹介します。

オケの本番や実技試験などで活かせる機会があるので楽しみ。話が面白くて、最後までずっと内容が聞けました。本番の時に自分がどうすれば良いのかわかったので、とても気持ちが楽になりました。次の本番で早く実践したいです!
熊谷枝美さん(ホルン・音大生)

思考の問題を解決する手順が分かった。良い状態・悪い状態と決めつけなくてよい!本番前あるいは本番中にやりたくないことが分かって良かった。本番までのそして本番直前のアガリをどう解消したらいいか
分かって活かせる。問題となる思考を特定しどうすれば解消できるかが分かった。
竹内慶貴さん(ホルン・音大生)

実際の本番や人前に出る仕事のときなどにさっそく使ってみたい。アガリとその対処法について理論的に具体例を示しながらお話をしてくださり、とても分かりやすかったです。なんとなくぼんやり気がついていたり、やっていたりしたことが、「あーこういうことだったのか!」と分かってスッキリしました。まずは実践してみたいです。
高島由紀子さん(歌)

アガリを生む2つの要因、舞台で起きる3つのこと、ネガティブ思考をどく抜きする7つのステップ。数で示してから各項の話に入っていてくれたので分かりやすくて良かったです。結局ストレスを生むのは自分の思考だと言うことを再認識しました。物事の捉え方をもっと明確にして正体不明の大きな不安にとらわれずに済みそうです。
鈴木千代さん(フルート奏者)

本番にまつわる特有のネガティブ思考をポジティブに日ひっくり返すきっかけになりそう座学が苦にならずあっという間に時間となった。ステージに上がる直前の何かに打ち勝たなければいけない嫌な感じを、順序だててクリアできそう。
M.T.さん(ホルン奏者)

普段の練習に、そして普段の生活にも活かせそう。行き詰まったときに役立ちそう。今まであがり症にはネガティブなイメージを持っていて、なんとかしなければと不安でいっぱいだったが、同じように悩む人がたくさんいることを知れて安心できました。アガル理由については分からないことが多くても、対処はできそうです。普段から練習に活かしてみたいと思います。練習の内容をよりよく、より楽しくできそうです。
A.T.さん(ホルン)

頭の中が少し変わった気がします。すごく良いことを教えて頂きました。思考の反転は「アガリ」にも他の色々なことにも使えそう。ネガティブ思考の毒抜きが本当にできそうです。
I.A.さん(ピアニスト)

今、感じているストレスの軽減や、次の本番への準備に+に作用する気がします。みんな同じなんだな、と思えてよかったです。試してみたいと思います。有り難うございました。
I.Y.さん(ホルン)

思考と自分の在り方の関係を探っていけそう。分かりやすく、ポイントが整理されていてよかったです。みんなが心配していることも興味を持っていることも具体的に取り上げてお話してくださったので、自分と対話しているようでした。
K.S.さん

アガリは自分だけでないと認識でき、また克服のステップのヒントを得られてよかった。人前に出てたくさん場数を踏んで、アガリと仲良く付き合っていきたい。
匿名希望(ピアニスト)

7つのステップ、とても勉強になりました。自分の緊張を今まで何となく漠然としか考えたことがなかったので、きょうの講座で学んですっきりしました。さっそく本番前に使ってみたいです。
匿名希望

日常的なことから本番に至まで、本当に様々なことに活かせると思います。実体験を元にお話してくださったのでとても分かりやすかったです。
T.T.さん(歌)

実際にアガリに苦労したバジルさんの実体験を通じた内容で、思考の毒抜きは普段の生活でも大いに役立ちそうです。アガリは私の弱点なので、それに焦点を当てた講座に参加できて満足。来月の本番に早速試してみます!
匿名希望(二胡)

ご自身の体験を元に話してくださったのですごく分かりやすく、活かせそうです!アガリの本質など難しいところも分かりやすく説明してもらえたのでよかった。私も緊張する人間なので、とても参考になりました。
T.I.さん(ピアノ&ボーカル)

内容が面白くてあっという間に時間が過ぎました。俗にいう「イメトレ」よりもっと深いですね。とにかく自分で実践してみよう!と思いました。
M.S.さん(歌)

ネガティブ思考に陥って抜け出せないとき、うまく毒浮きしてすぐ抜け出せそう。音楽家向けのワークショップではあったのだろうけれど、日常生活でもどんどん使える内容でよかった(自分は楽器をやらないので)。仕事でもプライベートでもネガティブ思考に陥ったときに、毒抜きできればラクにいろいろと対応できそうだと。アガリ以外の場面でも使える汎用性の高さがある。
O.M.さん(会社員)

舞台上で起きることは起るべくして起ることが分かり、ラクになりました。本番前のそわそわする時間に活かせそう。今までは本番前の緊張感を悪いことと思っていたのですか、次の本番ではそれを活用できそう。毒抜きのトレーニング、すぐ実践してみます。バジルさんがご自身の経験をもとにお話して下さり、特に学生時代の経験などは自分自身と重なることがあり、もっと前向きになっていけそうな気がしました。ありがとうございました。
M.A.さん(トランペット・音大生)


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管楽器奏者の首や顎を引く癖 [奏法について]

先日、あるトロンボーン奏者とのレッスンであったこと。レッスンの際、テーマとして浮上してきたのが

「高い音に跳躍するとき、首を引く(伸ばす)という動きが起きている」

ということでした。本人に尋ねると、それは自覚していなかったとのこと。

この首を引く(伸ばす)という動作、体全体を少しぶれさせ、気道を揺らしていましたから、必然的に息のコントロールにずれ/不正確さを生んでいました。

しかし、ポイントそれでもやっているということ。ここは重要なところで、不正確さを生んで邪魔をしているのに、それでもやっているのはそれ相応の理由があるのです。そう、どんな癖でも何らかの必要性を満たそうとして起っているものなのです。

このトロンボーン奏者の場合は、本当にやりたかったことは何だったのか。それは、

「マウスピースとアンブシュアの角度の調整」

でした。

音域が変わるとき、アンブシュアが変わります。そのため息を吹き込む角度も変わります。その角度を作るために、首を引いていたのです。実際に、望む角度自体はこのやり方で作れていたようでした。

しかし、幸いなことにもっとやりやすい方法がありました。

それは

「頭を前に傾けること」

です。

見た目としては「顎を引く」ような動きですが、実際は頭を前に軽く傾ける動きをすれば、望む角度が作れます。

強く顎を引くと、首のうしろが伸びる感じがするかもしれません。彼はそれをやっていて、呼吸に計算外の邪魔がかかっていたのです。

ですから、「角度を変える」というニーズ・必要性を満たす身体にとってもより効率的な他の方法さえ見つかれば、この癖はもう起きなくなります。必要がなくなるからです。

レッスンでは、その方法を模索しました。アンブシュアとマウスピースの角度を変えるのポイントで、呼吸に影響がないようにしたい。そのためのうってつけの方法があります。

それは

「頭を軽く前に傾ける」+「楽器を主に手首の動きで動かす」

ということです。

頭を非常に軽く前に傾ければ、顎を引こうとしたり首を後ろに引いたりせずともちゃんとアンブシュアのマウスピースに対する角度が望んでいるように変わります。繊細で優しい動きで筋肉も大して使いませんから、呼吸に影響がありません。ラクにできます。

そして、手首を動かせばとても簡単に楽器の角度を変えられますし、マウスピースのアンブシュアに対する圧力や接着の具合もかなり自由に調整できます。手を動かしていますから、やはり呼吸や胴体に影響がありません。

その二つを「癖の代わりになる新たな方法」として紹介して試してみると、このトロンボーン奏者は実にスムーズにアンブシュアが機能して簡単にクリアで豊かな音で跳躍ができました。本人も「おお!これは!」と驚くとともに喜び、手応えを掴んでいたようでした。

どんな癖でも、必ず何かをやろうとしてくれています。その癖を変えるには、

1:何をやろうとしているときに癖が現れるか観察する
2:その癖は、どんなニーズ・必要性を満たそうとしているのか分析する
3:代わりに何をすればニーズ・必要性が満たせるか考える
4:その新たな案を実行してみる

という手順を踏んでみると、いままでとは異なる展開があるかもしれません。ぜひ試してみてください。

このトロンボーン奏者とのレッスン、実は二回目にまた別の示唆に富むことがありました。それについては、また数日中に。


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あがりは味方。舞台で自分の全てを出す方法 [不安と緊張への対処]

昨日、私が所属するアレクサンダー・テクニークのレッスン・スタジオ「BODY CHANCE」にて、「アガリは味方。自分の全てを本番で出す方法」と題した特別セミナーを行いました。なんと50名近くの方にご参加頂き、大変盛り上がりました。その講座の要旨を今回はこのブログで紹介します。

アガリに苦しんだ10年間

私は中学二年生のときに初めて「アガリ」を経験しました。中学の吹奏楽部から金管5重奏で出場した京都府アンサンブルコンテストの舞台上でのことでした。手足は震え、口は乾き、まったく演奏がコントロールできなくなってしまい、大変ショッキングな出来事でした。それ以降その経験がトラウマになり、それから実に10年以上、アップダウンを繰り返しながら「アガリ」に苦しみました。

実はいまでも本番の舞台になるととても緊張します。本番の半分以上は必ずしも思い通りに吹けないのです。しかしそれでも、大学の卒業リサイタルをやり切れるましたし、二度の協奏曲ソリストとしての舞台においても実力を出し切るパフォーマンスができました。本当の大舞台ではむしろ好パフォーマンスができることが増えていきました。

今月末、久しぶりにちょっとしたソロの本番があります。そのことでやはり変わらず不安やネガティブな思考が浮かんできています。しかし、アガリに苦しんだ10年間から実体験を通して見出していった本番のための準備方法。そして本番で実力を発揮するための思考方法があります。それをいま毎日使いながら準備をしています。

それでは、以下よりその全体像の説明を試みます。読んでみて良さそうであれば、ぜひ実践してみて下さい。

アガリの二大原因

1:自分の能力以上のことをやろうとしている

これは本能的かつ正常な、起るべくして起る「アガリ」と言えるでしょう。自分にとって「難しい」と感じていること、あるいは正直手に負えないと感じるものを、本番でやろうとすると、必ずある種の「アガリ」が起きます。それは、心身システムにまだ不可能なことをあえてさせようとしているからです。不可能なことをやろうとすると、身体は必ず緊張します。

管楽器で言うと中学生や高校生、そして音大生の1〜2年生が経験する「アガリ」の多くは、実はこれが原因になっています。吹奏楽部に入部すると、楽器を操る能力がまだまだ発展途上にも関らずかなり難しい曲に取り組むのはよくあることです。また、音大生の場合も、大学に入っていきなり取り組む曲のレベルや、求められる様々な能力が一気に高まりますから、技術がまだ追いつかず必然的に緊張が起きることはよくあります。

それを人前でやろうとすると、当然ながら緊張します。ですが、これ以降伸べるように、緊張しているなかでも今の自分の実力をできる限り発揮するためのアプローチは、こういったケースでも使える価値あるものですので、ぜひご参照下さい。

もう一点あります。それは、能力以上のことをやろうとして緊張して失敗したという経験が、「アガリの二大原因」のふたつめ、自己否定または自己過小評価につながることが非常に多い、ということです。人前で緊張し失敗する、という体験は非常にショッキングであり、またトラウマティックな体験です。心のケアを大きな優しさを持って行わないと、あっというまに自己否定や自己不信の種として根が張り出します。ですので、実は多くの人が原因1と2が混在していると言えます。


2:自分の能力を過小評価または否定している

本当の意味で辛いアガリ症の原因はこれです。手は震え、身体は力のコントロールが効かず、口も乾きます。本番の舞台が、自分にとって恥をさらしツライ思いをするだけのものとしか感じられなくなってきます。気分が落ち込み、一度の失敗が何ヶ月もあるいは何年も心に突き刺さっています。音楽活動がただひたすら苦しく感じられ、練習意欲が削がれ、自分には何の取り柄も価値もないように感じられてしまう..... 。本番のステージ上では、「ああ.... またか.... 」という諦めにも似た無力感に襲われ、場合によっては演奏が止まってしまいます。

これの原因の根っこには、自己不信があります。本当は難なくできることでも、頭のどこかで「できない」と思ってしまい、そればかり真実味とリアリティがあるように感じられ、どんどん身体が演奏できない状態になっていき、実際に失敗してしまいます。

この現象に関して一番理解したいポイントは、過小評価あるいは自己否定は非現実を現実と思い違えていて信じ込んでいるにあります。つまり、頭のなかで駆け巡っていること、現実がマッチしない。そのときに恐ろしい「アガリ症」が発生します。

これから紹介する体系的なアプローチの根幹は「現実を知る」ことにあります。後述しますが、本番のドキドキや恐ろしいほどの緊迫感それ自体は実は正常かつ望ましい物です。多くの人はこれを問題視していますが、実際の問題は思考と現実がずれているときに演奏を損ねるような「アガリ症」につながります。


ドキドキ・カラカラ・ソワソワの存在意義

アガリ症の解放を目指す前にひとつ、しっかり理解しておきたいことがあります。それは、ネガティブ要素としてとらえられがちな心臓のバクバク、口がカラカラに渇く現象、妙にソワソワしていろんなことに気持ちが散漫する傾向が実は全てポジティブで役立つ現象であるということです。これらは全て、意識そしてエネルギーの高まりに伴う本番特有の現象であり、本番に必要なエネルギーなのです。簡単に言ってしまうと、アドレナリンの放出なのです。

1:心臓のバクバクが血液を体中に届けている

本番は、大勢の人の前で自分の大切な音楽を露にする、とても特別な瞬間です。ですので、身体はその特別な状況に対してベストの準備を提供してくれます。そのひとつが心臓のバクバクです。心臓が普段よりたくさん働いてくれるおかげで、全身に新鮮な血液が送り届けられます。そのおかげで筋肉は素早く反応し、フルに力を出すことができます。また新鮮な血液により脳に酸素が送られて、意識の働きが高まります。急なテンポチェンジや共演者の表現にもすぐに対応できるようにしてくれているのです。

2:口が渇いても楽器はちゃんと吹ける

本番の緊張感は、口を渇かせます。これは交感神経の高まりに伴う現象のようです。交感神経は、いつでも動き出せる張りつめた状態を作るべく働きます。大勢の人の前に立つという行為は決して日常的なものではなく、リラックスはむしろそぐいません。つまり口は渇くべくして渇きます。管楽器奏者にとってはこれがいつもと全く異なる感触に感じるので戸惑いますが、演奏に必要な量の唾液はちゃんと供給されます。それがこれまで積み重ねてきたテクニックの一部として身体は覚えているからです。いつもよりははるかに渇いた感じがして恐ろしいでしょうが、大丈夫。演奏のために必要な音楽のことやテクニックのことに思考を向けていけば、渇いた感触とは裏腹にちゃんとテクニックは機能します。

3:頭の中も情報収集でフル稼働

こういった状態において、当然脳もフル稼働しています。いつもと異なる特別な状況だからこそ、脳はその状況に最も適切な反応や行動を選択できるように、非常に高いレベルの情報収集モードに入ります。眼球活動も活動になって、視野の端っこに映ったちょっとしたものや、ほんのちょっとの物音、ちょっとした服の着心地や肌触りも、鋭く意識に入ってきます。この活発な意識の動きは、「静けさ」や「集中」とは正反対に感じるものです。しかし、それで正常です。妙なソワソワ感は脳の情報収集活動の証であることを覚えておきましょう。脳は情報をたくさん集めてはじめて、落ち着くことができます。このソワソワモードをすっ飛ばさずに、しっかり味わいましょう。すると結果的にタイミング良く落ち着きが出てくるはずです。


本番前日までに継続的にできる取り組み

それでは、本番の前日でも一週間前からでも一年前からでも繰り返し継続的にできる取り組みの方法を紹介していきます。これから紹介する方法は、緊張や恐ろしさを感じるたびにこまめに使っていくとよいでしょう。本番1ヶ月前から毎日部分的にやってみると、想像以上に建設的に本番に臨めるようになってきます。

ステップA:思考のネガティブな力を毒ぬきする

アガリ症のひとは、本番まであと〜日だ.... と考えただけで寒気がしたり、気持ちが動揺することがよくあるのではないでしょうか。アガリは本番の何日も、何ヶ月も前に本番のことを考えたときの反応からその種が育っています。

この恐怖や緊張というような反応を、本番の数日または数週間あるいは数ヶ月前から一回一回逃さず捉え、そのネガティブな力を消してストレスをその都度解消していくことは、地道ですが最も効果ある本番準備法・アガリ克服法と言えます。

その手順を紹介します。

1:ストレスや緊張、恐怖を感じたら、それに気付いておく。

誰かが迫っている本番について何かを口に出したりすると、とたんに怖くなってくることがありませんか?あるいは本番のことをちらっと思ったときに、どんどん悪い方に想像が膨らんできたり。そんなとき、たいてい私たちはストレス、恐怖、緊張を感じています。まずそういう反応をしている自分に気付いておきます。

2:そのときの「思考」を特定する。

自分が身体を緊張させていて、ストレスを感じているのに気付いたら、そのとき自分が何を考えているか特定しましょう。思考は、言葉のときもあればイメージのこともあります。その両者のときもあります。誰でもある例で言えば、

「もっと練習しなきゃいけない」
「失敗する光景」
「誰かにへたくそだと噂されている光景」

といったものです。

「オーディションで失敗し、職を得られず、困窮生活に陥る」

という連想イメージが働いていることもよくあります。

例えば「もっと練習しなきゃいけない」という言葉を思っただけでも、身体がギュッとなりませんか?緊張やストレスは「考えていること」が生んでいます。そのとき感じている緊張やストレスを生んでいる「考えていること」を特定しましょう。


3:その「思考」が絶対100%真実かどうか、自分に問いかけてみる。

緊張やストレスを生む思考。結論を先に言うと、そこには必ず「嘘」が含まれています。その嘘を本当と信じているために、緊張やストレスが生まれます。ということは、自分の思考をさも現実かのように信じることさえやめれば、実は緊張やストレスはスルッと消えたりパッと晴れたりします。

思考をやめる必要はありません。それは不可能です。思ってしまうものは思ってしまうからです。一週間後に久々のソロの本番が迫ってる私も、たびたびある思考が浮かびます。そしてその思考を信じている間は、緊張しておりストレスを感じています。

それは

「来週の本番で失敗したら、アレクサンダー・テクニークを信頼してもらえなくなる」

という思考です。

これは、信じていると恐ろしい思考です。そこで、自分に問いかけます。

「それは本当だろうか?」

— いちど問いかけるだけでは、まだ本当な気がします。
そこでさらに問います。

「絶対本当に真実と言い切れるだろうか?」

そこまで問いかけると、絶対100%真実とは言えないな、と気付かされます。思考への信じ込みがほぐれてくるまで(つまり絶対100%真実とは言い切れないと思うまで)繰り返し問い直しつづけます。


4:それが真実とは言えない証拠を、三つ探す。

自分の思考への信じ込みに揺さぶりをかける最も効果的な方法が、真実とは言えない証拠を探すことです。自分の思考が真実である、それへの反証を試みるのです。
私の場合。


「来週の本番で失敗したら、アレクサンダー・テクニークを信頼してもらえなくなる」

これが真実でないケースを3つ想定できるかどうか、試みます。想定できれば、その時点でこの思考が真実ではないことが決まります。

想定1:
たとえば私のレッスンですごく演奏がラクになった人がいたとします。その人は、私が演奏で失敗したからといって、私やアレクサンダー・テクニークに不信感を持つでしょうか? .... あまり現実的ではありません。

想定2:
メジャーリーグのコーチや監督には、選手としてはメジャーリーグを経験せず若く引退したひともいます。そのコーチや監督が始球式でうまくボールが投げられなかったとする。その途端に選手は信用しなくなるか?そんなことはありません。

想定3
ニューヨークフィルの団員に、何人もアレクサンダー・テクニーク教師がいます。彼らは演奏は超一流です。それなら私の演奏が二流だからといって、アレクサンダー・テクニークを信頼しない、そんなことはちょっと考えても無意味なことです。

このように、自分がさも現実かのように信じ込んでいたことが、「そうでないかもしれない」ケースや可能性が三つも見えてくれば、脳は自らの思い込みにしがみつく力を弱めます。このとき、ストレスの解放が始まります。


5:思考の結果を見て、それが望むかどうか決める。

ストレスをもたらしていると特定された思考。その思考を現実かのように思い込み反応しているとき、どんなことが自分に起きているますか?その身体的影響、精神的影響、感情面での影響、人間関係での影響、自分の行動まで幅広くその思考がもたらしている影響を認識していきます。そして、その影響を認識したうえで尚、その思考をこれからも信じ続けたいかどうか自分に問います。

私の場合ですと

思考:
「来週の本番で失敗したら、アレクサンダー・テクニークを信頼してもらえなくなる

身体的影響
・息が詰まる。
・頭や顎を後ろに引いて首が硬くなる。
・胸を縮こめる。
・背中の中央が重くなり、痛くなってくる。
・太ももや股関節が疲れてくる。
・疲れてくる。

精神面
・思考がネガティブなものばかりになる。
・建設的に考えたいことも、そういう頭の余地がなくなる。

感情面
・誰も味方がいない、という気分になる。
・自分のキャリアは終わり寸前だという気がしてくる。
・切羽詰まった、暗い気分。
・不穏で不吉な感じ。

行動面
・人とのつながりを切ってしまいそうになる。
・本番の機会をなるべく避けようとする。
・人に会いたくなくなる。
・能率、効率が落ちる


というように、よくよく見ていくとあまりにも後半な影響力があります。

さあ、ではそんな影響のあること(=ストレスをもたらしていると特定された思考を真実かのように思い込むこと)を自分は本当にやり続けたいだろうか?もちろ、続けたくありません。


6:その思考が無かったとしたら....

ストレスをもたらす思考が、もし無かったとしたら、いったいどんな感じがするでしょうか。目を閉じて想像します。いつもはどうしても考えてしまうストレス源の思考がもし仮に、まったく無かったとしたら。いつもその思考を持ってしまう場面を想像します。

その同じ場面で、例のストレス思考がもし仮にいっさい浮かんでなかったとしたら。

どんな感じがしますか?
どんな気分になりますか?
自分はどんな在り方や振る舞いになっていますか?
相手がどのように見えてきますか?

この想像をしていると、急にラクになったりホッとすることがあります。それがストレス思考を信じるのをやめた場合に恒常的に体験することになる状態です。


7:逆もまた真なり

最後に、元々のストレス思考をひっくり返してみます。ひっくり返したとき、それもまた真実と言えるでしょうか?あるいは元々のストレス思考より現実的である可能性はあるでしょうか?ここはいろんなやりようや工夫がありますので、私の場合だと次のようなひっくり返し方があります。


「来週の本番で失敗したら、アレクサンダー・テクニークを信頼してもらえなくなる」

「来週の本番で失敗しても、アレクサンダー・テクニークへの信頼は揺るがない」


「来週の本番で失敗したら、アレクサンダー・テクニークを信頼してもらえなくなる」

「来週の本番で失敗はしないかもしれない。だから大丈夫かもしれない」

「来週の本番で失敗したら、アレクサンダー・テクニークを信頼してもらえなくなる」

「来週の本番で失敗しようがしまいが、アレクサンダー・テクニークを信頼するかどうかは自分でなくそのひと本人が決める」

これらいずれも真実であると言えますね。このような光景が見えてくると、元々のストレス思考はもうだいぶ力を失っています。何を怖れていたのか一瞬忘れてしまうこともあるかもしれません。

ひっくり返し方は何通りもあります。例えば

「Aさんのせいで自分は弾きづらい」

「自分のせいでAさんが弾きづらい」


「Aさんのせいで自分は弾きづらい」

「自分のせいで自分を弾きにくくさせている」

という逆もまた真なり、を見つけられるときもあります。

この1〜7の手順を、繰り返し使いましょう。面倒ですが、毎回確実にストレスからの解放が起ります。ある意味、マインドの清掃作業と言えます。同じストレス思考は何度も戻ってくることがあります。ですがその度にこの地道な手順をやっておくと、だんだんと同じ思考が浮かんでも真剣に取り合わずに笑って済ませることができるようになります。そうやってマインドが安定してきます。そうすると、舞台上でも意識を向けたいことにちゃんとスムーズに向けられるようになってくるのです。


ステップB:舞台上で考えたいことの事前プログラミング

本番当日までに一日、一週間、一ヶ月、一年単位など与えられた時間の中でやっておくとよい事前準備があります。それは舞台上で考えたいことの事前プログラミングです。どれだけ身体が震えても、どれだけ口が渇いても、練習のときから繰り返し練習してきた中で培ってきた「意識」あるいは「思考の流れ」を舞台上でも実行すれば、不思議と身体はちゃんと音楽を思い通りに奏でます。普段とは全く感触や弾き心地・吹き心地・歌い心地がちがっているでしょうが、それでも音だけはちゃんと並んでいくのです。

ということは、肝心なのは「舞台上でも意識したいことを意識する・考えたいことを考える」ということです。これはちゃんと準備できます。

・音楽で語りたいこと伝えたいこと。そのメッセージ。
・聴衆の存在を感じようとすること。聴衆を見ること、聴くこと、つながること。
・技術的に意識していきたい様々なポイント。

そういったものを、舞台上のいつどのようなタイミングで考えるか、曲の流れの中でいつ何を意識したいか。それをどんどん見出していきましょう。譜面の中に、たとえば「ホールの向こうまで音を届ける」とか「ここは十分に息を吐いて」とか、そういう細かな「意識すること」を書き込んでいくのもとても役に立ちますし、意識すると役立つこと一覧表をこっそりメモしておいて、それを譜面の横に置いておくのもよいでしょう。

ある有名なクラリネット奏者が、譜面のように見えるものを譜面台に置いていたけれど、実は完全に暗譜してあって紙に大きく「ENJOY MUSIC !」と書いてあった、という話を聞いたことがあります。それもとても示唆に富む話です。

演奏に際して意識するとよい身体やマインドのことは、このブログにたくさん書いています。気に入ったものだけでもいくつかピックアップして、「考えたいリスト」に入れておくとよいでしょう。

ステップAによりマインドの清掃作業をしておくと、このステップBで事前にプログラミングしておいた「考えたいこと」がよりすんなり実際に舞台上でも考えやすくなります。


本番当日にできること

さあ、ここまでは本番前日までに長い時間をかけてできることでした。ここからは本番当日にできることを紹介します。これはBODYCHANCEの参与ディレクターであり世界的に最も優れたアレクサンダーテクニーク教師の一人であるワシントン大学演劇学部教授のキャシー・マデン氏が考案した、「本番にエネルギーを花開かせるためのエクササイズ」です。

1:感じていることを全て口に出す
本番の日、朝起きたらきっと色んな気持ちや感覚が沸き上がるでしょう。身体が重く感じたり、不安を覚えたり、あるいは楽しみでどうしようもないくらいかもしれません。身体で感じることも、心で感じることも、全て声に出して言い続けます。こうすることで、自分の現在地・現在状況とより接点を持てます。これは家でも楽屋でもリハーサル室でも、本番舞台袖や本番中の休みの小節の間でもやってみるといいでしょう。
 
2:空間を感じ、感覚を活性化する
本番の演奏会場に着いたら、ホールの舞台や客席などを歩き回ってみてください。天井や舞台の後ろなど、あらゆる方向や場所を眺めます。そうやって、まず視覚的に空間感覚的に、演奏する空間全体を自分の内側に取り込んでいきます。次に、その会場のを音で感じて行きましょう。ゲネプロ開始前だと、何人かの共演者がウォームアップしているかもしれません。話し声が聴こえたりするでしょう。それらの様々な音が、演奏空間にどのように響いているか、感じとっていきます。そういったことをしながら、演奏空間を触覚的にも感じましょう。まず、会場の温度はどうなっていますか?場所によって温度や空気の感じが異なっているかもしれません。また空気が流れているのが肌で感じられることもあります。床の堅さや材質を手や足で触れたりコツコツ叩いて感じることもできます。そうやって自分の内側と外側への感覚的な気付きに意識を向けて行きます。
 
3:「〜が好きだ」と声に出す
1や2をやってだんだん落ち着いて来たら、こんどは本番に向けてエネルギーを高める番です。そこで、「〜が好き」と声に出します。「〜」は何でも構いません。好きな食べ物、動物、趣味、場所、季節など思いつくままに「〜が好き」と声に出してみましょう。その好きなものや好きなものと一緒にいるところを想像しながら。好きなことを考えることで、そもそも演奏をやっている根源的なモチベーションを思い出しやすくなります。義務感や恐怖感というのは、確かに強いエネルギーで使い勝手がいいですが、嫌になって疲れるという良くない副作用があり長続きしません。言うなれば石炭を燃やして燃料にしているようなものです。対して、「好き」「やりたい」という意欲・望みはとてもクリーンで実は巨大なエネルギーなのです。言うなれば太陽エネルギーです。ただし、手っ取り早くはありません。このエクササイズは太陽エネルギーを使えるようにしていくものだとも言って良いでしょう。
 
以上、1〜3をそれぞれ2分程だけでもできますし、1時間づつかけることもできます。何回でも好きなだけ繰り返すといいでしょう。また、「怖いな」と感じる本番が決まったら、毎日ちょっとづつでもこのエクササイズを繰り返すと、さらに効果的です。
 
いざ、本番のステージに立ったら、あとはやることはただ一つ。音楽です。


まずは試してみよう

さあ、いかがだったでしょうか?

今回はいままで一番長い記事になりました。

来週末の本番、私はやっぱりドキドキソワソワしています。アレクサンダー・テクニーク教師としての活動が本格化して忙しく、楽器に触れる時間・余裕もあまりありません。そういう中で本番を迎えるのはほとんど初めての経験です。

ですが、この記事に書いた「方法」だけは知っています。あとはこれを使って、本番に立つのみ。頑張ります。

これを読んでいるあなたもぜひ、試してみてください。


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息を吸い込む音=実は吸えてない [管楽器奏者のための BodyThinking]

私たち管楽器奏者は、楽器を演奏するときに息の吸い方や吸う量のことを強く意識することが多いですね。「たくさん吸う」ことを心がけでいることが多いです。「たくさん吸う」ことを意識している人の中でよく見受けられることがひとつあります。

それは、「息を吸う音」を大きく立てていることがある、ということです。「スー」あるいは「ハー」という音を大きく、人によっては2〜3秒続けて立てていることもあります。そして人によっては声が混じっていることがあります。

さて、この「息を吸う音」ですが、時によっては声帯を閉じている証拠であるケースがあります。声帯を閉じていると、空気は気道へ入って行きづらくなります。声帯が通り道を塞ぎ抵抗を生んでいるからです。「息を吸う音」の正体が、息が声帯にぶつかっている摩擦音であることが多いのです。

つまり、たくさん吸っているつもりで大きな「吸う音」を立てているのですが、実態は逆に息が入りにくくなっているのです。そして、「吸う音」を立てることに使う力の感覚を、「吸えている実感」として解釈することになるケースもとても多いです。

ただし、管楽器を演奏しながらわずかな秒間でたくさんの息を吸う必要がある場合、たくさんの息が唇や歯にぶつかって摩擦音を立てるケースも十分にあります。これは演奏の実際上、避けられないこともありますから、問題視しなくてもよいでしょう。とは言いつつも、優れたプレイヤーであればあるほど息を吸い込む音が意外に小さいことも多いので、わずかな秒間でも思っている以上にアンブシュアを解いたり顎をゆるめて口を開いても大丈夫な可能性がありますから、そこは柔軟な見方ができる余地のあるところです。

本題は、息を吸うときに声帯を閉じてしまい、実はあまり吸えていないという現象です。これはどうやったら解くことができるでしょうか?それを考えるには、「声帯を閉じるのは声を出すとき=息を吐くとき」であるという事実に着目すると見えてきます。

声帯は声を出すあるいは音を出すときに閉じているものですから、つまり息を吐いているときに声帯は閉じると言えます。ということは、息を吸うときに声帯を閉じているとすれば、それは「吸う」つもりで「吐く作業」が実際には混ざっていて効率がちょっと悪いことを意味します。

これを変えるには好対照なアプローチが二つあります。

アプローチA
「吐く作業をお休みしよう」という意図を持つ

フレーズのなかで息を吸うそのとき、「吹く作業はお休み!」と思ってみましょう。その瞬間は、音を出すための息の仕事も、アンブシュアの仕事も全部お休みして解放していいのです。そうすると、息は一瞬のうちにたくさん、しかも静かにひとりでに入ってくるでしょう。これは吹く仕事の息の面においてもアンブシュアの面においてもこまめな回復をもたらし、健康的なテクニックと気持ちのよい持久力につながるポテンシャルを持ちます。


アプローチB
「吹くこと」だけを考える

アプローチAとかなり対照的ですが、これも効くことがあります。息を吸うことは、生命維持上でも必要不可欠であり、足りない分は必ず身体が反射的に補ってくれます。これに任せきってみよう、という発想です。音を出しフレーズを歌うことは、必ずしも自然あるいは本能的な身体の動きではありません。高度に意図的で技術的なものです。そしてそれを成り立たせているのは、もっぱら「吐いている方の息」です。ですから、息を吐くことだけを考えようではないか、ということです。吐くことを考えることで、「息を吸おう」と意識しすぎる邪魔が外れて、声帯を閉じてしまう葛藤あのある息の吸い方が変わることがあります。そして、つぎにどんなフレーズをどんな長さでどんな音量で吹くかを考えていれば、身体はそのために必要な息の量をひとりでに計算して取り入れてくれます。


現時点では、私はアプローチAの方がより無理がなくてよいかな、と思います。しかしアプローチBの方が役立つケースがあるのも間違いありません。

ぜひ、お試しあれ!


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ウルフ先生の夏合宿@スイス [雑記]

私のドイツ留学時代最大の恩師と言える、元ハンブルク交響楽団副主席ホルン奏者でアレクサンダー・テクニーク教師のウルフリード・トゥーレ先生。その先生が夏にスイスで合宿をやるよ〜とお知らせを頂きました。私は参加できないのですが、留学中あるいは留学を考えているみなさんは、めっちゃおススメです。詳しくは、ウルフ先生のサイトにて。英語、ドイツ語、ポルトガル語で読めるサイトです→こちらです

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新しい行動=クセの解消 [アレクサンダー・テクニークについて]

ここ数日で、改めて実感したことがあります。それは、あるクセを解消したければ、それを起こさないような別の新たな行動をする必要があるということです。このブログでも、もう何度かこの話はしていますが、この意味と実効性をさらに強く実感しました。

私の場合、ホルンを演奏するときにあるクセの代表格は三つ。

1:骨盤を前に押し出し、上半身が後下へ落ちて、股関節がロックされる
2:より高い音に移行するとき、顔面の筋肉を顔面の方にマウスピースから引くように動かす
3:息を吐き発音するそのとき、少しのどを詰め首のうしろを固くする

というものです。

3は1の結果起きている結果で、また2も1の結果と言えます。なので、1が中心的課題であると言えます。では、どうしたらこのクセを解消できるのか。

ホルンを吹く上では、肋骨より下から骨盤までの胴回りの筋肉(腹筋など)が必要な息の圧力のメイン供給源でありコントロールセンターです。かなり大きな仕事を、こういう胴回りは担っています。ということは、胴体はかなり強い力によって大きく動かされているとも言えます。しかしもちろん演奏のときには安定が必要ですから、大きく動く力に拮抗してバランスを取る作用が必要です。

実は、股関節のロックは、この「安定化」のひとつの選択なのです。ですが、骨盤を前に押して股関節をロックする方法での安定化では、胴体が曲がっていて今度は息を吐くための胴の筋肉が働きづらくなっており、また息の通り方自体にゆがみが生まれています。

これが、クセ3を引き起こしています。圧力を作るための胴の作用が不十分なので、首や胸、のどのあたりで圧力の「代行」をしているのです。そうすると連動してクセ2が作られます。息の圧力が不十分だから、息の出口である唇を薄く使いたくなる本能的な反応なのかもしれません。

やはり、クセ1が根幹にあります。では、どうしたらいいのか。

演奏のための息の吐き方に必要な胴の作業。それを支えるための安定化がポイントです。その安定化を担うのが、骨盤底であることを昨年の夏、キャシー•マデン先生から学びました。そのときのことについてはこちら→「キャシー・マデン先生との学び備忘録その1 骨盤底」 より最近になって、股関節に作用する深層筋も関っているようであることを学びました。

つまり、骨盤底を働かせていないから、代わりに股関節をロックする方式での「とりあえず安定=どちらかというと固定」になってしまうのです。そこからクセ2と3が派生する。

こういう全体像がつかめたということは、つまりクセの理解・認識はずいぶん進んでいることを意味します。でもこれで「じゃあそのクセをやめよう」と思うだけでは、クセは解消できません。クセは必要があって起きているのであり、その必要を新たな行動で満たさないとクセは解消されないからです。

私の場合、その新たな行動がつまり「骨盤底や股関節に作用する深い筋肉を息を吐くことに対しての支えとして働かせる」ということなのです。骨盤底は感覚があるわけではありませんが、腕を動かそうと意図すれば腕を動かせるのと同じ要領で、意図すれば働かせることができます。そして、働けばクセ1と3が抑制される(解消される)ので、意図したことができているかどうかは結果ですぐ分かるのです。骨盤底が働くという直接の感覚はなくても。

これがクセ1を解消する新しい行動でした。

クセ3は、クセ1が解消されればほぼ付随して解消されるので、クセ1を解消するための新しい行動の意図を持つことで対処されます。

クセ2は、これ用の新しい行動を選択するとよいことが分かりました。息の圧力がしっかりすると、唇を厚く使ってもしっかり息が通っていきます。そのため、息の圧力が安定するのが先に来るのは間違いありませんが、そのときに「唇は前方向に使う」と意図することで、唇を引いて薄く使いたくなるクセは抑制(解消)されます。

このとき、「唇を前に動かして厚くしよう」と直接的に『やってしまう』とうまくいかないのが興味深いところでした。

腕を動かすときに、腕の感触をわざわざ感じようとしながら動かそう動かそうとわざと動かすことはしませんよね。それをすると、腕は疲れます。

唇でも同じことでした。唇を前に動かす、という直接的にやってしまうことではなく、あくまで「唇を前方向に使う」という『意図』が肝心だったのです。その意図に応じてちゃんと唇は前方向に動かされていました。それでこそ、息とのバランスのとれた適量の動きだったのです。

きょうは息のこと、骨盤や胴体のこと、頭や首など上半身のこと、そしてアンブシュアのことを「ひとつながりで考える」ということが初めて自力でできた記念すべき日になったように思います。これで「理解」が真の意味で得られたからです。経験上、こういう「理解」が得られると、それ以降そのことを「教える」ときの効きが格段に上がり、またもっと的確に観察できるようになるからです。

文章にするとややこしくなりましたが、参考になれば幸いです。ぜひ、お試しあれ。


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悩んでいたことがスッキリ。音が変わって驚きました。 [生徒さんの声]

先月行った「音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク」ワークショップ参加者の声をご紹介します。

田中真登さん(ウッドベース)
実際にひとりひとりにレッスンをしてもらえて、よかったです。音が変わって驚きました。ラクに良い音で楽しく演奏できそうです。

新角耕司さん(打楽器)
変わるのが目に見える。原則をシンプルに教えてもらえて、「考え方」を身体の動きなどなどの前にしっかり教えてもらえてよかた。無理鳴らそうとしなくてよく、腕が首の根元から始まっていることを知れました。

常田幸子さん(ホルン)
とにかくおもしろかった!自分の変化や他の方の変化がこんなにもすぐに見られるものなんだな...と。わかりやすかったので、すぐに練習の中で行かせそうです。日頃の練習はもちろん、デスクワーク時の座り方にも役立ちます。

新角桂さん(クラリネット)
実際に楽器を使ったレッスンを受けれてよかったです。また他の方々の様々な楽器のケースを観察できたのがためになりました。個人練習やオケの練習の中で実際にやってみることができそうです。

M.H.さん(ホルン)
まず悩んでいたことがスッキリしました!今まで音色にこだわりすぎていたことに気づきました。まずは音が空間にどう響いているかに注目べきことが分かり、これから進むべき方向が見えた感じです。そして、今日の最大の収穫は、「どんな音を出したいか」を考えたから吹く、という原則です。アレクサンダー・テクニークは「やりたいことを実現する」ための『手段』であることを実感しました。高音を吹くとき、楽器が自分の方にやってくる、というアイデアも使えそう。なるほどと思いました。何回かレッスンに参加していますが、いつもいつも新しい発見があって、とっても面白いです。他の参加者の受けるレッスンがそのまま自分に応用できる経験は、いつもすごいなと思っています。

H.D.さん(ホルン)
他の方々のレッスンが見れて、音色や響きについて気づいていなかったこと、知らなかったことを学べました。自分の疑問や問題点に沿って、的確に応えてもらえた。すぐに演奏に活かせそうです。

U.S.さん(ホルン)
自分が疑問に思ていたことが、他の人のレッスンを見ることで解決されました。他の人の悩みを一緒になって考えることで、自分に+になって返ってきます。

S.C.さん(フルート)
前回参加したとき「気づいたら9割解決」ということを知りましたが、今回はその意味がもっと深く理解できました。身体の緊張をマイナスにとらえていましたが、それに気付いたということを+に考えていけそうです。頭が動いて身体がついてくるイメージに、全身を含める意識と感覚を感じられてよかったです。ずっと分からなかった「脚の支え」をレッスンの中で感じることができました。練習のときに試してみたいことが増えて、もっと楽しくなりそうです。


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